事務所通信
税務情報だけでなく、他士業の先生方からも有益な情報を頂戴し、
法律・労務人事・不動産・社会保険など幅広い情報をタイムリーに発信しています。
事務所通信 > 勤務税理士時代を回顧する その10 [勤務税理士時代の回顧]

勤務税理士時代を回顧する その10 [勤務税理士時代の回顧]

2008-07-31

 I先生の事務所には昭和55年5月に入所して以来、15年間勤務させていただきました。
 当時、会計事務所の職員は、3?5年周期で現在勤めている事務所を辞め、別の会計事務所に移る。そして一般的な会計事務所職員は、3?4ケ所の事務所に勤務した上で開業する、といった慣習があったようです。 私の大原簿記学校での勉強仲間も、数か所の事務所を経験している人もいました。 しかし私は別に他の事務所に移りたいという気は殆ど起きませんでした。
 その理由は一つには、入所時の経緯です。両親が頼みこんでズブの素人である私を、何とか入所させていただいたI先生に対する恩義、そしてもう一つは1か所で仕事を極めず、中途半端な状態で別の事務所に移るのは、結局長い目で見ると、事務所は勿論、自分自身にとっても損ではないかと思っていたからです。
 事実後の号で述べますように、自分自身の能力を高めることのみに傾注していた自分が、ある日突然副所長を言い渡され、図らずも中間管理職を経験することになったり、I先生が専任で受け持たれていた相続税の評価実務を少しずつ任されるようになったことなど、事務所に長く居れば居たで、自分に求められる仕事のスタイル、役割分担も変わってきます。
 よく2?3年で職場を変わる人に聞くと、大体次のような言葉が返ってきます。
「この事務所で自分がやるべき、というかやらせてもらえる仕事がどんなものか大体分かった。先が見えてきたので、またこれ以上この事務所にいてもあまり得るところはなさそうだから別の事務所に移る。」
 しかし、いま私が述べたように、事務所内での役割は徐徐に代わっていくのです。
 尤もI先生は、顧問先にしっかりとした組織を持つ会社が多数ありましたから、組織に対する考えがしっかりされていたせいかもしれません。
 一事務所にとどまり、色々な分野の仕事を経験させていただくか、それとも事務所を転々として、それぞれの事務所で様々な分野の仕事を経験するか、は個人の仕事に対する考え方の相違であります。
 つまり仕事へのアプロ?チの差ですので、どちらが良い、悪いと判断できる問題ではありません。
 あくまで私の場合には、I先生の所でいろいろな仕事を経験させていただいて十分に感謝しています。今の私の事務所の礎は、勿論I先生での勤務経験にあります。
 試験勉強の方は、いよいよ最後の「相続税法」にさしかかっていました。しかし私はこの「相続税法」が何故か嫌いでした。
 「相続税法」は勿論税法科目の一つですが、「法人税法」、「所得税法」に比べればずっとボリュ?ムも少なく、税法特有の言い回しも2年間経験しているので、9月に受講を始めた時の第一印象が、何だ、ちょろいな。というものでした。
 やはり敵をなめると後から必ずシッペ返しが来るものでして、どうもこの「相続税法」ののめり込んでいけなかったのが敗因でした。