事務所通信
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勤務税理士時代を回顧する その14 [勤務税理士時代の回顧]

2008-08-05

 当初からI先生は、会計事務所職員に管理を持ち込もうとしても、一筋縄ではいかないことを十分に察知されていたようで、私の悪戦苦闘ぶりをさして驚くこともなく、静かに見守っていました。
 「会計事務所の職員は,基本的に組織になじまない人たちだから、十分に気をつけなさい。」とI先生から事前に言われていた私ですが、自分には自分なりの持論があって、だからこそ余計に会計事務所職員に組織に対する理解を求めたのです。
 その持論とは、至極当たり前のことです。
 つまり、組織がしっかりしている中小企業に様々な経営助言をすべき立場にある会計事務所が、その事務所経営が組織としてしっかりしていなければ、どうして顧客に対して、主に人事、労務等の人に関する諸問題に対する有益な助言ができるのでしょうか、というものです。
 残念ながら会計事務所はごく一部の大規模事務所を除いて、殆どが1?5名程度の小規模事務所であり、10名規模の中規模事務所も全体の構成比率でいけば、数%にすぎないでしょう。
 コンサルタント業は多分に属人的つまりその人の技量によるところが大であることは事実ですが、少なくともそのコンサルタントはその前身が,、組織の中でその中枢として活躍し、組織の力、強み、弱み、運営のノウハウなどを十分に熟知してきた人であるべきでしょう。
 組織を知り尽くした人が初めて組織を語ることができるのではないか、というのが私のごく当たり前の考えでしたから、I事務所の職員にも組織に対する考えを教えようとしたのですが、頑としてはねのけられました。
 副所長になってだんだん分かってきたのですが、かなり大きな規模の会計事務所でも、あまり組織がしっかりしていない事務所もあるようです。
 元来私たち会計事務所職員は、お客様の所へ毎月巡回監査に出向き、帳面整理をし、お客様の税務相談に乗り、事務所に戻ってきて、電算処理つまりデータ入力から試算表作成までを行い、その試算表を携えて、所長または部門長(グル?プ長)に月次報告をします。
 その上で、所長なり部門長からコメントをもらい、お客様宛に試算表などを送付するか、訪問の上届けます。
 こうした一連の流れは、事務所内部では担当者と所長または部門長の二人で完結してしまうので、顧客数が多く何十人もの職員を使っている事務所でも、他の職員の手を煩わすことなく業務が完結してしまうのです。もう少し細分化されている事務所であれば、データの入力要員と試算表などのアウトプット帳表のチェツク要員がこれに加わるくらいで、事務所全体として職員が一丸となって同じ仕事に取り組むということは、まずありません。
 こうしたことを考えると、会計事務所の職員数が多い大規模事務所であっても、2?3名の小規模事務所であっても、業務の最小単位が2?3名で完結する以上あまり差が生じない。
 だから組織を論じても、事務所全体として行う大規模プロジェクトがない限りは、組織立った行動をそもそも必要としないのだから、ある意味無駄と考えることもできるでしょう。
 I先生が言いたいのもそれであったのかもしれません。2?3名という業務の最小単位さえしっかりしていれば、日常業務に支障のあることはない。お客様からの難しい相談業務は担当者が窓口として受け付けても、最終的にはI先生が対応し解決するから、職員は所長への報告さえきっちりやってくれればそれで良いということではないでしょうか。