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勤務税理士時代を回顧する その6 [勤務税理士時代の回顧]

2008-07-23

 税理士事務所に入所してからの1年目は、自分にとっては何もかもが目新しく、驚きの連続でした。ただ何とかついていこうと必死でした。しかし、その2でも触れましたが、自分の知識が浅はかなのにそれをなかなか認めようとせず、突っ張ってしまったツケが丁度1年目に露呈しました。
 それは私がI先生から直々に担当を依頼された、M物流サービスの決算の時でした。
 私も不慣れとは言え一応会計事務所に入所して1年近く経ち、また簿記の最低知識も学校と事務所で学びましたから、何とかM社の決算はできると、タカを括っていました。
 T先輩にも相談をせず、自分の力のみで何とか決算を組もうとしたのですが、賞与引当金の計算と法人税別表の記入にあたってハタと仕事が止まってしまいました。
 簿記を多少かじり、財務諸表論の勉強は始めましたが、法人税法は全くやっていませんでしたから、出来るはずもありません。
 結局私は決算の途中で、後の処理をT先輩とI先輩にお任せする羽目となってしまいました。
 T先輩、I先輩は何も言わず、私のやり散らかした仕事の後をテキパキと処理して下さいました。その時に初めて私は、自分の無知、無力さを大いに恥じると同時に、謙虚さを忘れた傲慢な自分が猛烈に恥ずかしくなりました。
今まで何を突っ張っていたのだろう。何も分かりもしない癖に、ベテラン職員を前にして、何を偉そうに振舞っていたのだろう。
 この敗北感、みじめさはまさに自分の傲慢さが招いた当然の結果である、とその時になって初めて痛感した稚拙な自分でした。
 と同時にT先輩、I先輩の偉大さを初めて理解することができました。
 会計事務所の職員さんたちは、地味な人たちが多いですが、仕事は本当にキッチリしている、まさに仕事師的な人が多く、その職人技に脱帽した次第です。
 私は、今回の決算処理の件でT、I先輩を始め諸先輩の方々に大変にご迷惑をかけたことを猛烈に反省し、I所長に、自分はまだまだ事務所の戦力になりえないので、2?3年勉強に専念させていただきたい。そして再度I事務所に入れるよう十分な知識をつけてきます。と相談しました。
 しかしI先生は即座にこう言われました。
 「小池さん、生意気を言うのもいい加減にしなさい。はなからあなたのようなド素人が戦力になるなどとは思っていません。税理士事務所の仕事はそんなに生易しいものではありません。あなたが勉強をしたいって言うことは結局逃げたいだけじゃないの。そんな事は許しません。頑張るつもりであれば、この事務所で頑張りなさい。そしてあなたが3年間経っても一人前になれなかったら、その時こそ私があなたをクビにします。」
 その激励こそ弱気になった私には、まさに天の声でした。救いの声でした。
 もともと自分の慢心が招いた今回の不祥事、まさに一人相撲を取っていただけです。
 それからは自分も目からウロコが落ちた思いで、このT先輩、I先輩についてゆこう、少しでもお二人に追いつけるように、と新たなるヤル気が沸々と湧いてきました。