事務所通信
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勤務税理士時代を回顧する その5 [勤務税理士時代の回顧]

2008-07-22

 仕事を再び頂いてからも、相変わらずT先輩とはギクシャクした関係が続いていました。
 私の主な仕事は、現金出納帳や入出金伝票と、領収証との突合、売上帳、仕入帳と請求書、振替伝票との突合をした上で、伝票から仕訳データを、当時使っていたTKCのコンピュ?タ?により入力する業務でした。
 TKCのコンピュ?タ?では、左端にピンク色のロ?ル紙がセットされており、仕訳を入力すると、ピンクのロ?ル紙に穴が刻み込まれます。そして1か月分打ち込みが終わると、そのロ?ル紙をバイク便、南新宿にあったTKC計算センタ?に送るのです。そしてその2?3日後に試算表及び経営分析表がTKCから送られてくるという仕組みでした。
 TKCのコンピュ?タ?はデ?タの遡求訂正が出来ず、仕訳を間違って入力してしまった場合には、逆仕訳を切ったうえで、改めて正しい仕訳を切るという二重手間を要するのが、大変煩雑でした。
 私が入社して1年ほど゛経ってから、I先生はJDLの機種を導入しました。
 モデル7という機種で、TKCと違ってデ?タの遡求訂正が出来る、またその場で試算表が出力できる、という当時としては画期的なコンピュ?タ?でした。
 あの頃はまだコンピュ?タ?を導入していない事務所が多かった中で、I先生は積極的にコンピュ?タ?化を推し進めていました。
 私も入社1年目は、あえて手書きで伝票起票、総勘定元帳への転記、精算表の作成、そして決算整理記入の後、合計残高試算表を作成する、まさに簿記の勉強そのものを顧客数社で経験しましたが、勿論手書きですから、大変時間がかかります。それだけならまだしも、精算表作成の段階になると貸借が一度で合わないのです。その原因は2つあります。
 一つは元帳に借方に書くべきものを貸方に書いてしまったなどの貸借逆記入によるもの、そしてもう一つは元帳への金額の転記ミスによるものです。
 わずか100仕訳位でも、それを元帳に転記して精算表を作成するまで、ゆうに半日はかかってしまいます。それに転記ミスが重なると下手をすると精算表作成まで1日かかってしまうこともありました。
 ただこの手書きでの訓練があったおかげで、数字の対する勘が養われたことも事実です。
 たとえば精算表での借方、貸方の合計額の差異が3または9で割り切れる数字の場合には、桁違いの記入が疑われます。一例として350円と記入すべき伝票を借方には350円、貸方には35円と記入してしまった場合、当然貸借は350円?35円=315円合わないことになります。
他の100仕訳がすべて貸借同額を記入していた場合、315円の貸借金額不一致をいかに早く見つけるか。
 勘の良いT先輩は、315円÷0.9=350円という、当たりをつけ、350円の伝票を記入したかを真っ先に探すのです。手書きの良さは転記に時間がかかる代わりに、頭の中に金額、仕訳がある程度インプットされていますから、100程度の仕訳数であれば、探し出すのは簡単なそうです。
 案の定T先輩は、350円の伝票を見つけ、その元帳への転記の金額を確認し、借方への転記ミスを一発で発見してしまいました。お見事!
 それに対して私は、いちいち100仕訳を最初から一つずつつぶしていきました。元帳への転記は、100仕訳×2=200回ですから、元帳を200回も確認していく必要があります。
 T先輩との時間の差は歴然としています。
 でもそうやつて先輩のやっている仕事の効率をよく観察し、いち早く自分のモノにすればよいのです。私も何回かやっているうちに少しずつ要領が分かってきました、と同時にミスの発見をいかにスピ?ドアップするか、その時間短縮を競うのが楽しくなってきました。
 自分のレベルアップが目に見えるからです。そうして数字に対する勘も徐々に養われてきました。