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平成23年度相続税法の大改正について その6 [相続税の大改正について]

2011-04-08

 相続時精算課税制度贈与は、このように何十年前にも遡って贈与した財産すべてを、相続の時に加算する
制度ですから、相続時の担税力が疑問視されるのではないか、つまりすでに贈与された財産を使ってしまっている場合やもらった財産が土地建物であった場合など税金を負担する力がなく、相続の時に大変に苦しむのではないか、という懸念が大いにあります。
 また親がこっそりと贈与してきた財産も俎上に上げられてしまうので、却って兄弟喧嘩の元となるのでは、と
大いに心配する、そういう使い方によっては逆効果ともなりかねない制度である、と私は思っています。

 これに対し、今回打ち出された贈与税の改正は、贈与のもう一つの柱である暦年課税制度の改正です。
暦年課税贈与は、従来からある贈与で、その年の1月1日から12月31日までにもらった財産の額を合計して、年間110万円を超えた場合に贈与税がかかるというものです。

 贈与税を軽減する最大の理由は、相続時精算課税制度贈与と同様に、資産を蓄えていながら消費しないお年寄り世代から、消費を活発に行う若者、壮年世代へ移転することにより消費の拡大を図ることにあります。

 今回の改正暦年課税制度贈与においては、次の点で使い勝手が良くなっています。
贈与された人、つまり受贈者を2つに分け、贈与した人からみて直系卑属、つまり自分の子供や孫(ただし20歳以上)に贈与した場合、比較的小口の贈与であっても贈与税率を引き下げることにより、贈与をやりやすくしています。
 それ以外の贈与については、贈与税率を若干手直しし、現行の6段階から8段階に細分化していまず。
こちらについては、一部で贈与税率を引き下げましたが、その一方で最高税率を現行の50%→55%に上げて
いますので、増税と減税の痛み分けです。

ここから読めることは、直系の子孫に対する贈与を活発に行って下さい、ということです。
ただ、直系の子供に対して行う贈与は、その贈与が相続前3年以内ですと、相続税計算上取り込まれてしまいますので、注意が必要です。
 その点孫に対して行う贈与は、孫が20歳以上であり、その孫を養子としていない限りにおいては、贈与した財産を相続税計算において取り込まれることはありませんので、
孫への贈与を最優先して考えることが良いかもしれません。

次回は、贈与財産の額による贈与税を現行法と改正法で比較したいと思います。