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平成23年度相続税法の改正について その4 [相続税の大改正について]

2011-02-13

 それは、贈与税の税率を従来から下げ、使い勝手を良くしていることです。
特に直系卑属、つまり子、孫に対する贈与税は、税率の下げ幅を大きくしています。

 元々贈与税は前回にもご説明した通り、相続税の補完税であり、生前に相続対策として贈与をしにくく
する意味で、わざと税率が早く上がるようにしていました。
 つまり今までの贈与税では、極端に言えば生前に贈与をしてはならない、という方向で法律が制定されていました。
 
しかし平成15年度の税制改正で、相続時精算課税制度が新設されました。
この贈与は、従来の暦年課税制度贈与、つまり1年ごとに贈与額を確定させるものとは全く発想を異にするもので、いわばお金持ちのお年寄りから、消費をたくさんする子供へ財産を早めに贈与して、若い人にお金を使ってもらうことによって、日本経済を活性化させ、景気を良くしようという発想の下に作られた制度です。

 この相続時精算課税制度贈与は、1年間110万円まで非課税という従来の暦年課税制度と比べて、非課税枠が極端に大きく、何と2500万円まで非課税という大盤振る舞いです。
 しかし、この制度は贈与とは言っても、言ってみれば将来の相続財産の前借り制度にすぎませんので、
将来の相続税を安くする対策としては疑問視される部分が多いことも事実です。
 また、この制度を一旦採用すると、これ以降の同一贈与者からの贈与は、すべてこの制度による贈与とされ、
暦年課税制度にもどることができません。
 さらに、この贈与は「相続時に精算する贈与」ですから、将来の相続からみれば何十年前の贈与であっても
相続時に精算、つまり贈与された財産を加算して相続税を計算する仕組みとなっているために、
 第一に、とっくに使ってしまった財産(現金など)に対して相続税がかかるので、相続時の重税感は否めません。
 第二に、かなり古い贈与まで持ち戻しの対象とすることによって、兄弟間での遺産の分配はより公平となるのでしょうが、しむろ私は揉める火種を増大させるのではないか、と思うのです。
 なぜって、世の親は嫁いだ娘や独立した我が息子に対して、何かと経済的援助をしているものです。
例えば嫁いだ娘に対して、これはお兄さんに黙って、と言ってこそっと里帰りした時に小遣いを渡したりとか、
給料の安い長男に対して、兄弟に分からないように頻繁に生活費を渡したりとか。
 これが良い悪いは別として、親としては子供たちはみなかわいく、また幸せに生活してほしいからこそ、
子供や孫に対して、たまに或いは頻繁に手助けをしているものですが、兄弟に貧富の差があれば、貧しい方の
子供家族には当然経済的援助も多額になります。
 それは親の側からみれば子供を平等に扱っているのでしょうが、子供の立場からみれば不公平極まりない
ということになります。
 だって自分にはちっとも経済的援助をしてくれないのに、嫁いだ妹には、実家に寄る度に少なくない小遣いを
渡しているのを知ったら、兄はそれが例え妹が稼ぎの悪い男と結婚したからだ、と頭では理解していても、内心は相当面白くないはずです。
 そうです。兄弟は生まれた時から、親の愛情の取り合いをやってきているのです。
だから、せっかく袖の下で親が苦労してうまく袖の下でやってきた贈与が、相続時精算課税制度贈与になれば