事務所通信
税務情報だけでなく、他士業の先生方からも有益な情報を頂戴し、
法律・労務人事・不動産・社会保険など幅広い情報をタイムリーに発信しています。
事務所通信 > 平成23年度相続税法の改正について その8 [相続税の大改正について]

平成23年度相続税法の改正について その8 [相続税の大改正について]

2011-04-09

 一般的に世間の常識では、贈与税は高いと思われていますが、この税率を見てどう思われますか?
1年間に1000万円をもらって、負担する贈与税額が177万円ですので、負担税率17.7%。
手取り額は823万円となります。

 この17.7%という数字は、私たち税理士からみれば低いほうの税率です。
法人税は中小企業の軽減税率であっても最低26%強、個人の所得税及び住民税の最低税率は15%です。
また土地建物の不動産を売却した時の譲渡所得税率は、所得税と住民税とを合わせて20%です。
上場株式の売却益に対する所得税及び住民税は、平成23年までは10%です。
また預金利息にかかる所得税及び地方税は合計で20%です。

 1000万円もらって、手取り額が823万円となってしまう。こう考えると贈与税は高いと思います。
しかし、資産を5億円持っていらっしゃる資産家が、奥様と子供さん2人を残して亡くなったらいくら相続税が
かかるのかお分かりですか?
 基礎控除額が大幅に引き下げられる改正法によれば、1億3110万円にもなってしまいます。
平均税率にして26.22%、しかも5億円以上の資産がある場合には、このケ?スでは5億円を超えた部分
に対して何と42.5%も相続税が増えていきます。
 ただし上記の税率は、配偶者つまり奥様が全体の遺産の2分の1までもらう場合に非課税となる特例は
考慮していません。考慮した場合には、それぞれ半分になりますので13.11%と21.25%となります。

 私は生前の相続税対策をお客様に説明する場合に、たびたび「贈与分岐点」という言葉を使います。
「贈与分岐点」は、相続税の税率と相続税の税率とを比較し、いくらまでの贈与であれば贈与の方が税率
が低いのか、ということを説明します。

 上記の5億円の資産家(推定相続人3人)であれば、相続税は配偶者の税額軽減特例を使っても、最高
税率21.25%です。
 一方この資産家が、1000万円を贈与した場合もらった人にかかる贈与税率は17.7%で最高税率40%です。
 私はこの資産家には、おそらく1000万円の贈与をお勧めします。

何故でしょう?相続税の平均税率は13.11%であるのに対して、贈与税の平均税率は17.7%ですから、
平均税率では贈与税の方が高いのに。

 考えてみてください。5億円の資産家が仮に1000万円を贈与しますと、贈与後の資産は4.9億円になりますね。この減った1000万円に対する相続税の税率は何%でしょうか?
 そうです。この1000万円に対しては最高税率から減っていくのです。ですから正解は21.25%です。
一方贈与税の平均税率は17.7%ですから、贈与した方がお得になります。
 ただこれにもカラクリがありまして、贈与税も累進税率ですから、1000万円の最高税率は40%になってしまうので、21.25%以下の税率に抑えようとすると、710万円までの贈与が良いということになります。
 あとは、資産家のご年齢と資産の構成、資産家のお考え、家族の生活状況や家族仲などを総合勘案しながら
提案をしていきます。

 以上は、直系のお子さん及びお孫さんへの贈与の場合の税率比較であることをお断りしておきます。