事務所通信
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相続税の大改正に思う その6 [相続税の大改正について]

2008-09-15

 ですから私は、「家族制度について」及び「農業の在り方について」でも触れていますように、
いい加減行き過ぎた自由主義を抑制し、もう一度針を戦前の日本に戻す必要があるのではないか、と考えているのです。
 と言っても家督相続主義、全体主義を復活させろと言っているのではありません。
 尤も今の日本人でそれを容認する人がいるとは思えませんが。
 これだけ好き勝手やってきて、自由の開放感を享受して、どっぷり浸かってきた日本人が、今さら戦前の日本に戻れるはずもありません。
 今現実に導入可能な制度としては、道徳教育の義務化及び核家族から二世帯以上の家族制度への転換を図る諸施策でしょう。

 そう思っている矢先に、遺産取得課税制度へ転換するということは、どういうことを意味するのでしょうか。
 今よりもさらに個人主義を推し進め、「家」そして家族制度にますますメスを入れ、断絶させようという気なのでしょうか。私にはそういう狂気の沙汰としか思えません。
 しかも前回の遺産取得課税方式への転換は、アメリカの占領下にあって、日本の民主化を進めようとする(よく言えばそういう側面も勿論ありましたが、もう一つの側面として、個々人の力は大したことはないが、まとまると無類の力を発揮する日本の国力を弱めようとする画策でもありました。)施策の一環でしたが、今回の転換は、日本人自らが自らの手で、家族制度の断絶化に拍車をかけようとしているのですから、何おかいわんやです。

 さらにこの遺産取得課税方式に転換した場合、農家特に都市農家にとっての打撃は計り知れないものがあります。
何故なら都市農家の殆どは兼業農家であり、農家をしながら、一方で不動産賃貸業を営んでいる方が殆どであるからです。
 幸い農地については納税猶予制度を選択することにより、永久或いは20年間営農を続けるすることにより、その農地にかかる相続税が大幅に軽減され、農地を代々子孫へ引き継いでいくことができます。
 しかしアパ?ト敷地や駐車場敷地、貸宅地などは地価、路線価も高いため、現行の相続税法でも、あまり有効利用されていない土地は、相続税の支払いのために切り売りするなり、物納するなりして次世代へバトンタッチする時、つまり相続時には、減らして渡していっているのが実情です。
 三代続けばただの家になると言われるくらい、相続税の負担は重い上に、今回の相続税の大増税によりさらに負担は増します。
 その上に、分家への財産分配を、それこそ民法で規定するように均分で分配してしまったら、あっという間に本家はただの家になってしまいます。