事務所通信
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相続税の大改正に思う その7 [相続税の大改正について]

2008-09-16

 遺産取得課税方式では、均分つまり法定相続分で遺産を分けることが最も相続税額が少なくなる制度ですから、言ってみれば国税庁は法定相続を思い切り推奨しているようなものです。
 ところが悪いことに都市農家の殆どは兼業農家であり、農業自体で家族全員の生計が成り立っていない農家が殆どです。
 つまり農業自体は赤字だけれども、不動産賃貸収入があるからかろうじて農業を続けていかれる農家が殆どであるということです。
 もしこの不動産を分家に分配したり、売却してお金に代えてそれを分家に分配したらどうなるのでしょうか。
 あっという間に本家の財産は枯渇し、農業そのものを継続していくことはできなくなっていくでしょう。
 遺産取得課税方式の考え方に、「偶然の理由による富の増加に担税力を見出して...」いう文章がありますが、その偶然の理由とは何事でしょうか。
 いかにも先祖代々の財産を引き継いできた方々を罪悪視するような言い回しには、私は驚きを通り越して、憤りを禁じえません。

 第一、農家の方々は皆等しく、その所有している農地や貸地、貸アパ?トを自分の財産とは思っていません。
ご先祖様からの預かり財産であると思っています。

 ですからリスクを採って利用するよりも、貸アパ?トや貸駐車場、貸宅地等の低利用でもいいから安全な運用を心掛け、大事に守って次世代以降に引き継ごうと努力されているのです。
 私の知っている地主の方々も皆地味な方々ばかりで、贅沢な暮らしなど決してせず、むしろサラリ?マン世帯よりもお金の使い方、暮らしぶりは質素と思えるくらいです。
 それもこれもご先祖様からの預かり財産を、如何に減らさず次世代以降に引き継ぐことに最大の関心が置かれているからです。

 そうした農家の方々の心を踏みにじり、そして都市農家を崩壊させ、さらにはひびの入った家族制度をさらに崩壊させようとする、遺産取得課税方式には決して賛成することはできません。
 まさに病的な状態にある今の日本の社会を、さらに悪化させるとんでもない制度を断じて許すことはできません。
官僚政治と言われて久しいですが、官僚の方々こそ、今の日本の置かれた状況を客観的に見てください。しっかりとした時代認識を持って下さい。尤もこれは、現代の政治家にも声を大にして言いたいところではありますが。
 今後の日本が良くなり、元気になる施策を考えてください、と切に願うばかりです。