事務所通信
税務情報だけでなく、他士業の先生方からも有益な情報を頂戴し、
法律・労務人事・不動産・社会保険など幅広い情報をタイムリーに発信しています。
事務所通信 > 相続税対策について その10 [相続税対策について]

相続税対策について その10 [相続税対策について]

2011-09-08

 前回ご説明した、賃貸アパ?ト、マンション建築による相続税軽減対策は、最も
ポピュラ?な対策といえます。
 この節税策の最大のポイントは、まともに評価される現金を、建物という不動産に置き換
える、
 つまり評価の高いものから評価の低いものへの資産の組み換えを行うということです。

 この手法は他にも活用できます。例えば

? 自宅を改築する、或いは自動車、高額備品を購入する
  現金を家屋や自動車、備品などの不動産、動産など評価の低いものに組み換えする
? 売却予定土地の測量を行う
  現金で相続後に必要な支出を先に行うことにより、現金そのものを減らしておく
? 墓地や仏壇を生前に購入する   
  現金を非課税財産に組み換えるということです

 相続税法第22条で、相続財産の評価は基本的に時価主義と規定していますが、建物や
構築物などの不動産、車両備品などの動産は、所有者の仕様になっていたり、流通性、
換金性に劣ることから、評価額は購入した時の支払額をはるかに下回ることが多いのです。
 また墓地、仏壇などは非課税財産となっていますので、元気なうちに将来必要な支出が
あれば、先取りすることで相当の節税が可能です。

 ただ上記の賃貸マンション建築による相続税軽減対策には一つの大きな盲点があります。

それは、アパ?ト、マンション経営を大きな設備投資事業と捉えているかです。 

 先の例でいえば3億円もの借入金をして賃貸マンションを建てましたが、この鉄筋コンクリ
?ト造の建物であれば、法定耐用年数も約50年あります。
 つまり簡単に言えば3億円の投資を行い、50年間かけて投下資本を回収していく事業を
行ったということです。

 毎月の賃料がいくら入り、それに対する支出がいつ、いくら発生するか、大規模修繕の頻度
は、そしてかかる費用はどの程度か、借入金の利息を固定利率でいくか、変動にするか、
将来つまり少なくとも向こう10年間の金利の動向は?賃料の下落は何年ごとに、何%程度
見積もるか、また空き室はいつごろから発生し、その割合はどの程度か?
 所得税、住民税、固定資産税などの諸税はどの程度か、どの程度の空き室までキャッシュ
フロ?からみて耐えられるか などなど。

 大東建託のコマ?シャルではありませんが、アパ?ト、マンション賃貸事業に降りかかる
様々なリスクをどの程度見積もり、50年間事業を継続していくか、その採算性、安全性を慎
重に検討していかなければなりません。

 そうです。これは大規模な設備投資事業なのです。

 設備投資事業というのは、最初に大きな初期設備投資のため多額のお金が必要で、逆に
入金は少しずつ何十年もに亘って回収していく、ある意味気の遠くなる事業です。
中途で辞めようとしても、借金は多く残り、また建物の解体処分にも多額の費用が必要です。
 オ?ナ?チェンジといいまして、中古の賃貸マンションを土地付きで売却するという手もあり
ますが、ほとんどの場合建物の時価はタダ同然に買い叩かれます。
 つまり建物を建てて賃貸事業を始めたら、基本的に建物が老朽化するまで事業は辞められ
ないということです。
 
 それなのに地主の方々の多くは、相続税の軽減効果に関心が殆ど行ってしまい、肝心の賃
貸事業の大変さを軽視してしまいます。
 特にバブル期、土地が毎月上がっていく現象を見るにつけ、とにかく相続税対策を急がねば
と焦って賃貸マンショ事業に飛びついた方も多いと聞いています。

 勿論建築にあたっては各建築業者がそれなりの収支計画書を持参してきますが、その計画
は非常に甘めに作ってあることが多いのです。
 家賃値下がりリスク、空き室リスク、修繕費リスク、諸税の見積もりなど、
収入は多めに、支出は少なめに計算しているので、その収支計算書を思い切り辛めに査定
することが何より必要です。
 こういう時が税理士の出番です。