事務所通信
税務情報だけでなく、他士業の先生方からも有益な情報を頂戴し、
法律・労務人事・不動産・社会保険など幅広い情報をタイムリーに発信しています。
事務所通信 > 税理士制度の今後について その2 [税理士制度の今後について]

税理士制度の今後について その2 [税理士制度の今後について]

2008-07-06

 次に会員の増強に関する施策について、両会長から次のような意見交換がなされました。
 まず戸張公認会計士県会長は、次世代を担う会計士の確保にかなり危機感を持っているようで、今後の日本の急速な少子高齢化を考えると、もう既に各業界で有能な人材の分捕り合戦は始まっているとの懸念を表明し、その上で公認会計士としはて積極的に学校に出向き、生徒たちに公認会計士の現在やっている業務の説明並びに将来性などをPRすることにより、生徒たちに将来の職業選択の一選択肢の中に、公認会計士を加えてもらうことを十分にアピ?ルすることの必要性を説いていました。
 さらに公認会計士業界自体が、学生たちにとって魅力的な就職市場であるように、より自己研鑽に励むと同時に、会費の面で収入の多寡により差さ設けたり、研修に関してより受講しやすい体制を整えたり、と様々な工夫をこらしていくことが必要である、と力説していました。
 一方、税理士会側の朝倉会長は、東京に隣接した横浜、山梨県で構成する東京地方会は、地理的にまた市場規模の点からしても、登録税理士の大半が東京会に流れてしまう厳しい現実を指摘した上で、補助税理士に対する会費が開業税理士と同額である点を改善する、租税教育、確定申告期無料相談などを通じて、対外的に積極的に税理士の社会貢献をアピ?ルし、税理士の地位向上を図るとともに、会計参与制度や成年後見人制度への税理士の積極的参入により税理士の職域拡大を進めていくことで、業界を挙げて税理士受験者に将来性のある業界として訴えていきたい、と述べられました。
 両会長の意見を聞いていて思った事は、まず手っ取り早い改善策は存在しないだろうということ。業界の質の向上を目指していかなければならない。その質の向上も二つの側面があって、一つは構成員の質の向上、そしてもう一つは業界でおこなう業務レベルの質の向上である。
 最初の構成員の質の向上に関する考えられる施策としては、ざっと見て試験制度の見直し、資格のあり方に対する見直し、研修等を通じた構成員への質の維持及びレベルアップ、また税理士法や公認会計士法への違反、各種法律違反者への罰則強化を通じて業界の浄化作用の強化を図る、などが挙げられよう。
 一方業界での業務レベルの質的向上に関する施策としては、税理士でいえばやはり会計参与、税務訴訟代理、成年後見人への税理士の関与を積極的に図ることにより、税理士業界全体の社会的認知度アップを図るとともに、上記と重複するが研修等を通じ税理士個々人の業務レベルの質的維持及び向上を図る必要があろう。
 ただここで印象に残ったのが、戸張会長の言われた言葉である。
 それは、「各業界の発展を目指すのは勿論当然のことですが、これからはもっと広い視野に立った行動が求められています。それは″社会貢献″という視野です。」
 業界の発展が社会貢献につながるという考え方で我々特に税理士会はやってきたが、税理士のように無料による税務相談制度がない公認会計士では、己が関与する企業の発展のみを考えるのではなく、もっと広い視野に立った社会正義を目指すという意味で社会貢献をキ?ワ?ドに使われたのであろう。
 日頃から税務相談を通じて社会貢献活動をしている税理士としては、特に社会貢献は目新しい言葉ではないが、しかし戸張会長の言わんとしている言葉を聞いて思ったことは、より広い視野で社会正義を追求する姿勢は、できることからコツコツ社会貢献活動を積み上げていくやり方と、もう一つ大きく上からそれぞれの業界でなすべき社会貢献活動の在り方を大枠で考えていくといういわば虫の目と、鳥の目を二つ持つことで、業界の活動がよりぶれのないものになるだろうということであった。