事務所通信
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農家、農業のあり方について その4 [農業について考える]

2008-06-17

 私はよく人間は動物であるとか、遺伝子の話し、生物の進化などの話しを引き合いに出して、今人間社会そして現在の日本で起きている様々な事象について考えることとしています。
 というのも、様々な事象を断片的、局所的に見るのではなく、もっと大きな目で俯瞰するように見た方が、より的確に物事の本質を捉えることができると思うからです。
 例えて言えば、山に登ったとき、高度が上がれば上がるほど下界の景色がよりワイドになり、より全体を見渡せるように。
 日本は明治維新後、欧米の列強諸国に植民地化されるのを防ぐべく、また江戸時代の長い間鎖国で欧米先進諸国の文明に遅れをとった分を取り戻すべく、国を挙げて西洋文明の取り入れを図りました。
 その結果、その国策は日本にとって繁栄をもたらした点で功績は大ではありましたが、同時に資本主義社会の負の側面も背負い込む結果となりました。
 それは行きすぎた個人主義の蔓延による家族関係及び人間関係の希薄化です。
特にそれが加速したのは第二次世界大戦後の昭和の復興期です。
 敗戦後アメリカ合衆国が乗り込んできて、GHQ主導による政策が次々と打ち出されました。
三井、三菱、住友を始めとする財閥解体、農地解放、家督相続から平等相続への転換など、日本人の最大の強みであり、列強にとって大いに脅威であった全体主義、集団主義を解体させるべく、個人主義を前面に押し出した施策を発表しました。
 家族制度にあっては、高度経済成長を可能にした地方からの労働力の大都市圏への大量流入により生まれた核家族制度が戦後政策の最大の産物です。
 人々は「家」の呪縛から解かれて自由になり、特に女性はある意味「家」を支える裏方としてしか生きられなかった戦前に比べて、その自由度、社会的地位の向上は目ざましく、現在もその自由な生き方を見つけた女性は生き生きとしています。
 そしてそうした背景を受けて生まれた、戦後生まれの戦争を知らない世代は、いわゆるニューファミリ?という新しい親子関係、価値観を作りだしました。
 子が親に厳格に育てられていた戦前とは180度転換して、親と子が友達のような関係、そういうスタイルを模索したのです。
 また戦後世代はフォーク世代でもあり、服装の自由化と相俟って平和のありがたさ、自由、解放を賛美し、謳歌することができました。
 昭和30年代になると、戦後復興が急速に進み、巷にモノがあふれるようになりました。
車、テレビ、洗濯機、掃除機など生活を便利にする耐久消費財が次々と登場し、家からの自由、地域からの自由を手に入れた人々は、次には物にも恵まれ、物心両面にわたって自由主義経済そして資本主義経済のありがたみを存分に享受してきました。
 そうした戦後の前半期(昭和21年?平成元年あたりまで)は、自由主義経済、資本主義経済の陽のあたる側面つまり良い面ばかりが目立っていました。
 しかし物事、制度すべてに表と裏があります。良いことばかり目立っていましたが、同時に負の側面つまりマイナス面もプラス面が大きくなると同じ程度で、徐々に大きくなっていったのです。
 窮屈で自由が利かなかった戦前が、敗戦を機に一挙に180度転換し、一挙に自由になった。今まで鬱積していたうっぷんを晴らすべく、大いに自由を満喫した。とここまでは良いのですがその後がいけない。

自由に歯止めが利かなくなったことです。自由が暴走を始めたのです。人々の心の中で。