事務所通信
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農家、農業のあり方についてその12 [農業について考える]

2008-06-29

 さて農地を何としても手放すまいと考える農家の方の考えも理解できますが、その一方で農地のより有効活用も図っていかなければならない。
 その命題を解決する術はあるのか。そう考えたとき、農地に対する納税猶予制度を緩和することで解決できないのかと私は思うのです。
 宅地であれば、借地権があります。つまり土地の所有者がその土地を自分で使用しない場合、その宅地を人に貸す。借りた人はその土地を占有し、その土地上に建物を建て使用収益を開始する。つまり所有と占有の分離です。
 借地借家法も改正され、普通借地権と定期借地権の二つができ、契約時に選択できるようになりました。
 この結果土地の所有者は、定期借地権契約を締結すれば一定期間後に土地が返還され、その後自分で使用収益ができるようになりました。
 農地の納税猶予制度においても、この制度が適用できないものでしょうか。
 というのも借地借家法、それも定期借地権を納税猶予した農地について適用できれば、農家は所有権を手放すことなくしかも一定期間後には更地で返還される。
 一方借り手側は、一定期間農地を自由に使用収益し、そこから十分な生産を挙げられる。
 勿論その一定期間は、借地権ではありませんがかなり長期間少なくても10?20年程度に設定すべきだとは思います。
 市民菜園の場合には借り手は一般市民であり、皆さん思い思いに農地を耕作し、収穫の喜びを実感されるでしょう。 借り手が大企業の場合には、より広大な農地に対してより効率的な生産活動を行い、我が国の食糧自給率の改善に大きく寄与するでしょう。
 この制度が導入されれば、高齢化が進み農業の担い手に苦慮しているが、農地を手放したくない農家の思惑と、農地の荒廃化が進む農地の現状を打開し、より農地に対しての有効活用を図ることができると思うのですが、如何でしょうか。
 特に都市近郊農家にとって、固定資産税、相続税の負担は極めて重く、農業を続けるか、それとも先祖伝来の田畑を手放して農家を辞めるか、という究極の二者択一を迫られているケ?スが多いのです。
 相続税について農地の納税猶予制度を設けたのは、あくまで自作農に限るという正論はよくわかるのですが、片や農地を形だけ維持している農家が多い一方で、市民菜園の需要拡大、農地の有効活用が十分図れていない現状を見るにつけ、所有者と利用者とのマッチングを図る制度の導入はまさに緊急かつ有効な対策ではないか、という思いを強くしています。、