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妻のヘソクリは妻の財産となるか その2 [贈与のすすめ]

2012-11-18

私の知人に夫婦共に地方公務員の方がいます。夫はS県S市の市役所職員、妻は
S県の小学校教員をされています。
 
 そのO氏とは大学時代の校友で、もう30年以上お付き合いをしています。最近は私
も忙しいので、年に1?2度新宿で飲みながらお互いの近況を語り合う程度です。

 そのO氏が決まってこぼす愚痴が、自分の小遣いについてです。夫婦ともに地方公
務員で給料も跳び抜けて高くはものの、おそらく二人とも7?800万円の年収はある
でしょう。二人合わせて1500?1600万円の年収ですから大したものです。

 それだけの年収がありながら、夫であるO氏はピ?ビ?している。
何でそんなに小遣いが少ないかと問いただせば、子供2人を含めた4人の生活費の
大半は自分が出しているとのこと。妻はたまに外食をする時に負担してくれる位で、
基本的にO家の生活費の大半は、夫の給料で賄っているとのこと。

 「それじゃあ、奥さんは大分ため込んでいるんだろう?」と聞くと、「多分ね。俺には
ワイフの貯金通帳は見せてくれないけど、大分溜まっていると思うよ。」と寂しげに答え
るO氏。

 これって不公平じゃありませんか?夫婦ともほぼ同額の給料を稼いていながら、それ
ぞれの預貯金高には雲泥の差がある。
 本来夫婦はお互いに扶助義務があるし、お互いの生活費も折半するのが普通では?
と誰だって思うでしょう?

 ちなみにO氏夫妻は、O君が文句を言いながらも夫婦仲は良い様子。離婚に発展する
ことはなさそうですが、仮定論で考えてみましょう。
 今のO家で、夫婦が離婚した場合、財産分与はどうすべきか?
この際、夫と妻どちらかが有責、つまり不貞とか暴力とか離婚の原因がどちらかにある
のではなく、あくまで二人の性格の不一致によるものと仮定します。

 そりゃあ、夫婦財産を足して2で割れば良い、と考えるのが普通でしょう。
私は弁護士ではないので、民法の知識は一般レベルですが、妻の預金は妻のもの、
夫の預金は夫のもの、二人で共同で建てた自宅は2分の1ずつということになるでしょ
うか。

 仮に妻の預金が5000万円で、夫の預金が100万円しかなかった場合、それでも足し
て2で割ることはしないのでしょうか?

 これはおかしいと思います。確かに妻の5000万円の財産は、妻が教員として稼いで
きた所得の蓄積ではあり、夫から援助、贈与を受けたものではありません。
 しかし一方で、それならばなぜ夫の預金は100万円しかないのでしょうか?夫が競馬、
飲み屋通い、パチンコ等の遊興費に使う金が多くて、貯蓄が殆どないのならいざ知らず、
きちんと稼いでいながら、家族の生活費、子供の教育費に殆ど消えていったとすれば、
妻がそれだけの蓄財が出来たのも、夫が生活費、教育費を多く負担してくれたおかげと
考えることは出来ないでしょうか? 
 
 離婚に伴う財産分与では、離婚の原因がどちらにあるか、つまり過失の度合いも勿論
問われますが、もう一つの問題は、分ける基である財産をどう把握するかです。

 妻名義の預金は妻のもの、夫名義の預金は夫のもの、とするならば、夫名義で建てた
家屋は夫のものですか?名義だけにこだわり、名義となっている人のもので良いのです
か?
 
 そうしますと、夫婦共稼ぎでなく専業主婦の場合、妻は自分名義の預金すら持ってい
ないかもしれません。仮にあったとしても生活費を動かす程度の預金ですから、残高も
知れているでしょう。

 そういう状態で、夫婦両方の責任で離婚に至った場合、妻は微々たる預金で離婚調
停に納得しますか?

 そうではないでしょう。夫の預金、夫名義の家屋は私のものでもあるのよ、と強く主張
されるはずです。

 何故でしょうか?だって夫の稼ぎは自分のものでもある、つまり夫婦で形成された財産
は、どちら名義(多くの場合夫ですが)のものであっても、実質的には夫婦共有の財産と
考えているからです。それが夫婦の常識だからです。