事務所通信
税務情報だけでなく、他士業の先生方からも有益な情報を頂戴し、
法律・労務人事・不動産・社会保険など幅広い情報をタイムリーに発信しています。
事務所通信 > これからの相続税対策 その4 [相続税対策について]

これからの相続税対策 その4 [相続税対策について]

2011-09-25

 いずれにせよこれからは土地の所有そのものが目的ではなく、土地から生み出される
収益力に着目しての土地売買が活発になってくるでしょう。

 そうなりますと先祖代々長きに亘って土地を相続し所有してきた多くの地主さんは、
今後どう対応すべきでしょうか。

 先祖から引き継がれてきた土地は、殆どの場合自宅の付近に集中しており、目が届く
という点ではよいのですが、その反面その地域の住宅事情に左右される点、そしてその
地域が住宅地、市街化調整区域など土地の利用に制限のある地域内にある場合に利用の
選択肢が殆どない点など多くの問題点があります。

 土地を金融商品に例えてみると分かり易いでしょう。
土地が一箇所に集中して存在するということは、金融商品でいえば株式、投資信託、債券
などの金融商品がある中で、ある特定の商品に集中投資するようなものだと思います。
 
 金融商品への投資の観点からいえば、当然リスク分散をすべきでしょう。
ということは、一箇所に集中して土地を保有しているよりは、地域、土地の種類にバリエ?
ションを加えておくことがリスク分散になるはずです。

 もう一つ、住宅用地の多くは一種低層住居専用区域といって、極めて収益力の低い利用
しかできません。この用途地域は戸建住宅用地であり、良好な住環境を確保することを目的
ととする地域ですので、容積率、建蔽率も低いですし、高さ制限もあります。そして何より
も、倉庫や店舗の建築が禁止されているのです。
 これでは地主さんがこの地域内の土地を利用するとしたら、低層アパ?トの建築か月極
駐車場しか選択肢はありません。

 また市街化調整区域内に土地を所有されている地主さんはもっと気の毒です。
農業や林業を営んでいる少数の事業者の方は別として、そうでない方はこの区域内に宅地、
雑種地、山林を有していても殆ど利用形態の選択肢はありません。
 宅地で既存宅地であれば、市街化区域内の一種低層住居専用区域と同様の利用が可能です
が、雑種地ですと建物の建築が不可ですから、資材置き場や駐車場、中古車販売の展示場な
どの利用しかできません。山林も同様です。
 市街化調整区域内でもコンビニ、医療施設、老人ホ?ム、物流施設などの建築が可能です
が、規模、立地などごく限られた条件をクリアした土地のみです。

 これらの
?土地所有地域が集中している 
?土地の利用選択肢が限られている
 という多くの地主の方々が悩んでいる点を改善する方法は、やはり土地の買い換えしか
ないのでは、と私は思います。

 先祖代々の土地を手放し、別の場所に土地を購入することについては、多くの地主の方々
は心情的に拒否反応を示されます。
 しかし、利益を生まない土地をこれからも未来永劫所有していても、少子高齢化の進展と
経済も衰退の一途をたどるであろうこれからの日本を考えますと、ますます苦しくなるだけ
のように思えて仕方がないのです。

 確かに買い換えにもリスクが伴いますし、自分の目が届きにくくなるという点で怖さも
あります。
 しかし現状維持を選択し、ジリ貧になっていくことを見ていくことと、どちらが良いか
ということしかありません。
 
 私はあくまで方向性を申し上げているだけですが、間違いなく
?土地はこれからはより収益力に関心が集まる
?低利用、低収益の土地はますます収益が悪化する
?相続税対策の中心は納税資金対策に移行していく
 という傾向が強まっていく、と思います。