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勤務税理士時代を回顧する その12 [勤務税理士時代の回顧]

2008-08-03

 ただ税理士試験に合格したと言っても、I税理士事務所の中での私の仕事は当面何ら変わることはありませんでした。
 しかし、私が昭和63年7月に税理士登録をしてから1年近く経った時、I事務所に激震が走りました。
その出来事とは、長くI事務所に勤務しその屋台骨を背負ってきた,,、T先輩とI先輩が同時に辞めることになったことです。
 I事務所の番頭さんと一番の職人が同時に辞めるのですから、その影響は測り知れません。
 しかし、I先生は覚悟を決めておられたのか、少なとも表立って両人を引き止めることはしませんでした。そして残った職員に新たな気持ちで頑張るように鼓舞されました。
 そしてお二人の先輩は、確か平成元年6月に職場を去っていきました。
 I先生も事務所の創生期を支えてこられた最大の功労者であるお二人を失うことは、それこそ両腕をもがれる,、断腸の思いであっただろうと思いますが、そこはやはり経営者です。
 気持ちを鬼にしてお二人の退職を受け入れました。
 お二人が辞めた原因は、当時の私には唐突であまり事情が呑み込めていませんでしたが、あとから思うと次の原因であると推測されます。
 I先生にすれば、事務所の番頭さんに事務所内部の運営を任せてきたが、時間が経過するにつれ、外回りをやって必死に営業をかけているI先生と、内を守るTさんとの距離が徐々に開いてきて、意見が合わなくなってきたのだろう、ということ。
 両人の立場からすれば、自分たちが必死にやっていても、自分たちの思う通りに事が運ばない。ましてI先生からすれば、この事務所はI事務所であり、自分が船頭であるのにどうも職員が自分の思う通りに動いてくれない苛立ちが募ってきてしまったのでしょう。
 一方のT先輩は、I先生の考え方も理解できるが、片や事務所の職員の立場を守ることも番頭としての自分の役目と考え、職務に忠実であろうとすればするほど、営業を重視する先生との考えに開きが出てしまった、そしていつの間にか両者の距離が埋められないほど開いていた、ということではないかと思います。
 どこの税理士事務所も悩みは同じでしょうが、番頭さんが居て、事務所の中を束ねていてくれることによつて、先生は安心して関心が外に向かうことができるのですが、片や番頭さんに任せすぎると、気がついた時には,,いつの間にか自分の事務所がさながら番頭さんの事務所となってしまう,そういう思いはかなりの税理士が経験されていると思います。
 そういう段階を乗り越えて事務所も新たな進歩を遂げるのですが、I事務所にとっては、まさにそうした事務所の変貌期にさしかかったのが平成元年であったと思うのです。時にI先生が開業してから23年目の出来事でした。
 私にとっても晴天の霹靂的な出来事で、大変に悲しい出来事でしたが、その後も計15年、I先生の事務所に勤務させていただき、税理士事務所運営の大変さをつぶさに観察することができたことは、今の事務所を運営していく上で大変に参考になっています。