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勤務税理士時代を回顧する その4 [勤務税理士時代の回顧]

2008-07-21

 そんなド素人の私でしたが、当時の私は大変に生意気で、T先輩の指導をろくろく守らないどころか、いちいちへ理屈をつけて先輩の指導に口応えをしていたため、T先輩も怒って仕事を1か月位与えてもらえないこともありました。
 そんな時でも私は反省するどころか、むしろ売られた喧嘩は買おうじゃないか、ではありませんがむしろますます意固地になって、自分の考え方、理屈は間違っていないと開き直ってしまいました。
 その仕事を干されていた時に何をしていたって? 
その時はお客様の過去の資料を読み返して、どういう経理処理をしていたか確認したり、または簿記の勉強をしていました。
 しかし横に座っているT先輩と、1か月も口を聞かないのですから、その重苦しい空気といったらありません。今考えると自分だけでなく、その重苦しい空気は事務所全体を蔓延させていたに違いありません。ほとほと己の狭い殻に閉じこもっていた自分が恥ずかしくなります。
 ただその時に思ったことで、自分の今自信になっていることが一つだけあります。
それは、この税理士事務所の世界は、自分次第なのだということ。

芸は身を助ける、のたとえの通り、自分に力があれば何とかやっていける、だから敵は相手ではなく自分である、ということです。

 この考え方に確信を持ってから、自分に迷いはありませんでした。ひたすら自分に集中し、自分の能力を磨くことのみを考え、行動する毎日でした。
 尤も、この職人気質の考えがこびりついてしまったお陰で、今人を使うことの難しさに大変に苦労していますが、これは「経営について」他のブログで書き綴っています。
 結局1か月後にT先輩から再び仕事をもらえましたが、その仕事の有難かったこと。
仕事に忙殺されるのも嫌ですが、仕事を頂けるその有難味はその時に十分思い知りました。
 だから辞めさせたい人からは、仕事を取り上げてしまうのが一番利くと思いますが、私のようにある程度図太くないと、仕事を取り上げられた人はノイロ?ゼになってしまうかもしれません。
 だって自分以外の職員は仕事であくせく働いているのに、それを横目で見ながらポツンとしている位みじめな姿はありません。誰からも声を掛けられず、全く無視された中で職場に出勤する位つらい仕打ちはありません。
 仕事を1か月干されたことによって、仕事に対する有難味を痛切に感じ、また自分に力をつける必要性を痛切に感じ、結果的に自分にとっては大いに転機になりました。
 それまでの自分は社会人としてわずか2年間の経験でしたがし、組織の中で仕事をしていましたから、甘えの構造の中に自分を置いていたと思います。
 それが一転、10人規模の事務所に入って、職員一人一人が一匹狼の職場なのに、新人なのだからいつも先輩が声をかけてくれる、かまってくれるなどという甘えからいつまでも脱却できなかった自分が苦しむのは当然の報いだと思います。
 今でこそ新人教育が当然のこととされていますが、当時の税理士事務所は丁稚奉公的色彩を色濃く残していた、言わば職人気質が強く残っていた業界でしたので、私のように黙って口を開け餌を運んでくれるのを待つような、受け身の指示待ち人間は到底通用しない世界でした。
 「先輩のしている仕事を横からつぶさに観察して、そのやり方を盗むんだ。」と、もう一人のI先輩が諭してくれました。