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家族制度について考える その3 [家族制度について]

2008-06-07

 加藤諦三氏の著書「アメリカインディアンの教え」は、人間としての生き方を説いたものですが、各個人個人が精神的に自立した存在であることを強調しています。
 私はこの著書を何十度読んだことでしょうか。そして親が精神的に自立した大人であってこそ初めて、子供に対しても愛情深くしっかりとした教育をしていけるのだ、とこの著書から深く感銘を受けました。
 ″精神的に自立″とは、結構キビしい言葉です。かくいう私もとても弱い人間で、いつも他人の目、評判を気にしていますし、困ったことがあればすぐに人に依存したくなります。
 ただこの場合の依存とは、人に頼るな、仕事を任せるなといった意味ではなく、精神的にベッタリと人に甘えたり、人のせいにしたりするという意味です。
 すべて自分に自信がないことの表われです。だからいつもクヨクヨしていますし、人が私を認めてくれないと憤ったり、イライラしたりします。自分がこういう劣等感が強い人間であるために自己愛が強くなってしまい、それがために他の人に対してまで愛情を注ぐ余裕があまりありません。
 こういう人間が子供を正しく導けるのでしょうか?親が偏屈だったり虚栄心が強かったり、嫉妬深かったりその心が病んでいたら、その影響が子供に出てしまうことも加藤氏はその著書の中で強調されていました。

自分自身の気持ちが平穏で満ち足りている。
何事にもこだわらず、動揺もしない。
ありのままの心を持ち、全ての事象をありのままに受け止めること。

 自分は気の弱い愚かな人間です。まさに小市民を地で行くような。
そんな私ですが、いつも変わらねば、少しでも精神的に自立し、真の大人に近づけるように。
と思って、自戒の意味を込めて、何ヶ月かに一度はこの著書を手に取り、自分の最近の言動を振り返っています。その都度改めて自分の愚かさ、軽率さに反省しきり。
 一時テレビでも流行りましたが、「反省だけならサルでも出来る」のでありまして、ちっとも改善しない自分の精神の幼さにあきれるばかりです。
 私は敬虔な仏教徒ではありませんが、母が15年前亡くなって以来、「魔訶般若波羅密多心経」だけは殆ど毎日欠かさず読んでいます。そのお経の中で私が気に入っているフレ?ズがあります。   

一つは「色即是空、空即是色」です。

 これは色つまり形のあるもの、これはすなわち空つまり空虚で形がない。逆に空つまり形のないものがすなわち色つまり形がある。ということです。何を馬鹿な事を言っているとお思いでしょうが、これは簡単に言えば形のあると思っていたものが実は形がなく、逆に形のないと思っていたものに形がある、すなわち人の心のありようによって、あるともないともどうとでも解釈できるつまり見えたり見えなかったりするということです。
 逆にいえば人の心は曇りガラスのように濁っていて物や事象を正しく見ることができない、色メガネで曲がって見えてしまったり、或いは全く見えなくなってしまう。
 そしてそのメガネを曇らせているのは他ならぬ己の邪心にある。、だから真実の目でモノ、事象を見られるように、己の心を曇らせないようにしていなければならない、という教えです。

もう一つは「心無?礙」です。

 これは、?礙の無いつまりわだかまりのない心という意味です。
 人間は誰しも心に多くの邪心を抱えています。名誉欲、征服欲、虚栄心、過度な自己愛など。
人と競争することが当たり前の今の日本社会の現状では、邪心をなくせと言ってもそれは不可能に近いほど難しいことでしょうが、邪心にまみれて生活していると、己の自己愛、虚栄心、支配欲などを満たすため人を傷つけ、人を踏み台にしても何の罪悪感も持たない、悪く言えば鬼畜のような根性になってしまうのでしょう。
 もっと怖いのはそうした邪心にまみれた大人が、わが子に正しい人としての道を説こうとしてもできるでしょうか?
親が叶わなかった夢、無念を晴らすべく、わが子に過剰な期待をしている親は数多くいます。
 私も十分その心情はお察ししますが、そうした社会に対して復讐の怨念を持った大人の気持ちを子供たちはどう受け止めるのでしょうか。
 私自分、自分自身に無念な思いも相当あります。子供に頑張ってもらってその思いを晴らしてほしいと考えることもありますが、加藤氏に言わせれば、それは子供をして自分の思いを遂げようとする親のエゴだけで、子供の個性を何ら考慮せず子供にとって足かせになるだけであると断罪しています。
 この記事を読んだとき、自分はフ?ッとため息をつき、しばし目をつぶって己の本当の気持ちはどうなのか、と己に問うてみました。するとやはりそこには自分勝手な論理、己の虚栄心、征服欲を子供に投影させて自己満足を図ろうとしている大いなる邪心に気がつきました。そしてそんな自分の気持ちを満たそうとすることはあきらめました。
 「子は親の鏡である。」とも言います。
己の邪心を少しでも改めること、これしか子育てを上手にやっていく術はないようです。

 あと一つ私が気に入っているフレーズを紹介します。
皆さんもよくご承知の、相田みつを氏の残した数々の書簡のなかでのフレーズ。

しあわせは自分の心が決める。

今日はまた己への自戒を大いに込めて、生意気にも心のあり方についてコメントしました。