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家族制度について考える その5 [家族制度について]

2008-06-09

 現代の日本社会が何故かくも欲望の野放図状態に陥ってしまったのでしょうか。

私はその最大の原因は、道徳教育の欠如にあると確信しています。

 明治維新後、日本は西洋の列強国と少しでも早く肩を並べるべく、富国強兵及び西洋文明の積極的な取り入れを行いました。そして第二次世界大戦の敗戦を機に軍国主義を全て否定し、平和を希求した現日本国憲法が出来たことは皆さんご承知の通りです。
 と同時に敗戦を機に新憲法、民法制度の下、基本的人権の尊重、言論の自由、家督相続から平等相続への移行など国民一人一人の権利が戦前に比べて大幅に拡がり、自由で平等な社会に一挙に移行しました。
 そして戦後復興での急激な高度経済成長もあって、車、テレビ、洗濯機など人々の周りには便利で快適な物が増え、人々の暮らしは物心両面にわたって戦前とは比較にならないほど、自由で快適になりました。
 その劇的な変化が僅か数十年の間に起こったのです。
自由で縛りがなくなり、しかも便利な物が次々と誕生していった昭和の後期は、物心両面にわたって豊かで向かうところ敵なし。ジュパン.アズ.NO.1と言われ日本がまさに世界を牛耳ったとまで言われた、狂い咲きの時代でした。
ここまで短期間に良いことづくめとなれば、人間浮かれない方がおかしい。
 事実あの頃の日本人は?億総白痴状態でした。
それでも平家ではありませんが、驕れる者久しからず。うたかたの夢ではありませんが、わが世の春を謳歌していた日本はバブル崩壊と共に、砂上の楼閣のごとくもろくも一瞬にして崩れ去ったのでした。
 そして宴の後に残ったのは、難題ばかり山積されました。
年金問題、人口減少社会、超少子高齢化社会の到来、一挙に低成長化したことによる国家、地方財政の逼迫、そしてあれだけ高度経済成長を支えてきた核家族制度は一転親子断絶をもたらしました。
 どこもかしくも戦後の自由主義制度の負の側面が一挙に顕在化し、社会不安が日本全体を覆い尽くす勢いで、どこから手を付けて良いのか分からない状態に陥っています。
 しかし私は思うのです。その種火はずっと前からあったのだと。
因果応報の字の通り、全ての事象には原因があり、それが結果に結びつきます。
 人間うまくいっている時には、何をやってもうまくいくものです。それが日本経済の場合、昭和60年から平成元年までの4年間がそのピ?クであった。あとは急坂を転げ落ちるように落ちていきました。
 家族制度についても、核家族制度は資本主義経済にあって、大量に労働力を供給するシステムとしては最大限に機能したけれども、その副作用は家族の断絶を招き、その影響が特に子供に顕著に出た訳です。
 カギっ子、と言われ両親が働きに出て、家に帰っても誰もいない家庭。親子の生活のリズムがかみ合わず、いつもすれ違いの生活を送る家庭。そんな家庭でどうやって子供と十分なコミュニケ?ションを図っていかれるのでしょうか。どうやって子供に人としてのあり方、友達とのそして社会との付き合い方を教えてあげられるのでしょうか。
 家庭にあっても経済合理主義が支配し、愛情、スキンシップなど子供にとって一番必要なものが欠如している状態が長く続けば、子供も愛情飢餓になり、人間不信になってウツ病になるか、それとも人に過大な愛情を要求する自己中心的な大人に育っていってしまうのです。
 そこには人に対して寛大でいられる余裕のある人は殆どいません。いつも神経をがピリピリさせて苛立っている、自己愛が強く常に自分の事しか考える余裕がない、そんな人が大量に生み出されてしまうのです、
 そして物質的には豊かでも精神的にはスキマ風が吹いている青少年時代を送った子供達がやがて結婚し、親になって子供を教育していきます。
 愛情飢餓で育った親が、子供に対して正しい愛情を注いでゆけなくても不思議はありません。
子育てに悩み親自身がノイロ?ゼになることも珍しくありません。何故なら親自身、その幼少時代から自分の思うとおりにならないことは少なく、忍耐力に欠けていたから、大変にストレスのたまる育児についていけなくなったからです。
 そうかと思うと、親が子供に過度の期待をかけ、子供を押し潰そうとしているケ?スも多く見られます。そうした過剰期待の悲しい結末に子による親殺しがあります。
 本当に教育は怖いものです。日本全体が経済成長に浮かれている間に、サイレントキラ?のごとく徐々に子供の心を蝕んでいたのです。そして気がついた時には、子供の気持ちは荒みきっていました。これが今日本全体で起こっている様々な不幸な事件の主原因ではないでしょうか。
 さきほど触れましたように、日本全体が資本主義社会、自由主義社会の負の遺産が次から次へと顕在化し手がつけられない状態になっています。
 では何から手を付けるべきか?

私は、何を置いてもまず教育の立て直しが必要であると確信しています。
それも家族制度の在り方にもメスを入れた道徳教育の導入。

 勿論即効性はありませんが、数十年先に必ず劇的な変化が現われると思うのです。
時あたかも韓国にせよ、中国にせよ、インドにせよ諸外国特に近隣アジア諸国は、日本の明治維新後のように国力増強に取り組み、その柱として子供教育に非常に力を入れています。
 わが日本は、経済においては十分物質文明を謳歌してきたわけですから、今こそその間に忘れ去られてきた道徳教育に最大の力を注ぐべきでしょう。それこそ国を挙げて。