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広大地に関する考察 その7 [広大地についての考察]

2008-09-09

 「最有効使用の原則」とは、不動産鑑定評価基準では次のように述べています。
 不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用すなわち最有効使用を前提として把握される価格を標準として形成される。
 この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的に見て、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。
 なお、ある不動産についての現実の使用方法は、必ずしも最有効使用に基づいているものではなく、不合理な又は個人的な事情による使用方法のために、当該不動産が十分な効用を発揮していない場合があることに留意すべきである。
 この基準の解釈によれば、大半の広大地について経済的に最も合理的であると認められる開発行為は、マンション用地か戸建分譲用地が適しているという結論になります。

 しかし不動産鑑定基準の後段にも述べている、主に地主の方々が所有して広い自宅の敷地または地主の方々が自身の財産保全を図るべく、賃貸アパ?トや中高層賃貸マンションを建てている現状もあるのでして、それらの敷地をどう判断するか迷うことが多々あります。
 つまりそれらの宅地が、現に有効利用している宅地になるのか、という疑問です。

 これについては、地主の方々は先代からの相続により土地を古くから、といいますか無償あるいは非常に安い価格で取得しており、不動産賃貸事業としては、賃貸アパ?トあるいは中高層賃貸マンションの建築資金のみが設備投資資金であり、一般の人から見れば土地をあらかじめ取得している分だけ有利な事業です。
 普通、事業というのは、何もない状態からそこに資金を投入して事業を興すのですが、地主の方々の不動産賃貸事業の場合、あらかじめ下駄をはかせてもらった状態での事業ということですから、大変にその後の収支及び運営は楽になります。
 従ってこういう土地を、不動産鑑定評価基準による最有効使用の原則から考えるとすれば、一般経済人の合理性から 見て、その広大な土地を購入し、その上に賃貸アパ?トあるいは中高層マンションを建てて賃貸する不動産賃貸事業が事業として成り立ちうるのかどうか、ということです。 、
 おそらく殆どの土地において、事業として成り立たないでしょう。
 だとすれば、賃貸アパ?トまたは中高層賃貸マンションが建っている敷地においても、それがマンション適地でない限り、広大地の通達を適用することが可能ということになります。
 最有効使用の原則から推していけば、当然そういう結論になるのですが、しかし現実に賃貸アパ?トまたは中高層賃貸マンションが建っているという現実を無視してよいのか、はたと迷ってしまうのです。
 二階までの高度利用しかしていない賃貸アパ?トについては、最有効使用とはいえないと思うのですが、中高層賃貸マンション用地については、土地を購入してまでペイしない事業ではあっても、現に有効利用されている敷地に見えないこともないので、この辺の判断は大変に難しく、自分の頭の中では残念ながら未だにきちっと整理できておりません。