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相続税の大改正に思う その1 [相続税の大改正について]

2008-09-10

 どうも来年(平成21年)の相続開始から、相続税が大改正されることが確実なようですね。
 元々相続税については、納税者数が平成18事業年度では4万数千人で、1年間の死亡者数108万人に対する申告割合は4.2%と少なく、この10年来も4?5%という低い申告割合で続いていましたから、近々課税最低限の引き上げ等により、課税対象者数を引き上げるであろうという観測はされていました。
 しかし今回の相続税法の改正は、単に課税ベースを拡大するといった部分改正にとどまらず、相続税の課税方式そのものを転換するという、思い切った抜本的改正になることが確実視されています。

 その課税方式の改正とは、現行の遺産課税方式から遺産取得課税方式への転換であります。

 この課税方式の転換は、そもそも相続税をどういう根拠に立脚して課税するかという考え方の180度の転換を意味するものであり、それこそ天と地がひっくり返る位の大幅な方向転換です。

 遺産課税方式とは、故人の遺した遺産そのものに対して相続税を課税するものです。その課税の根拠は、故人が生前の一生を通じた税負担の清算を行うとともに、故人が先祖中蓄積した富の一部を死亡により社会に一部還元する、ことにあると言われています。
 そして遺族すなわち相続人や受遺者は、故人の財産から相続税額を引いた残りを、遺産として分け合うということになります。
 つまり相続税は故人の遺産に対して課税され、相続人等は共同して故人にかかる相続税を負担した後の残りを分け合うことから、当然相続税に対しては、相続人全員が連帯して責任を負うということに帰結します。
この考えは、「家」制度に立脚する考え方であり、故人は「家」の財産を包括的に承継してきた当主であり、相続税も個人である当主にかかるというよりも、小池「家」、佐藤「家」などの「家」の形成、蓄積してきた財産に対して課税される、という考え方です。
 事実、明治38年に導入された当時の相続税の課税方式は遺産課税方式でした。当時は家督相続でしたから当然この方式になります。

 これに対して、遺産取得課税方式は、視点が遺産課税方式とは180度違っております。
 つまり遺産課税方式が、「家」そして亡くなった当主の財産に着目したのに対して、遺産取得課税方式は、遺産を取得した相続人、受遺者の担税力に着目したものです。
 遺産取得課税方式の課税根拠は、相続人及び受遺者に対して、偶然の理由による富の増加に担税力を見出して、それに対して課税することにより富の集中に対する抑制を図る、ことにあり、相続税は言わば所得税の一時所得課税に近い考え方です。