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相続税対策について その6 [相続税対策について]

2011-09-04

 相続税対策には三つの側面があることは前に述べました。
?相続税軽減対策 ?納税資金対策 ?争族対策 です。

 このうち、お客様が何と言っても関心がダントツで高いのが、相続税軽減対策です。
これは誰が考えても当たり前ですよね。
 平成16年開始の相続から最高税率が50%に引き下げられたとはいっても、最大で
相続財産の半分が相続税として持っていかれることを考えれば、相続税そのものを
少しでも安くする対策に、最大の関心を持たれるのは至極当然です。

 この相続税軽減対策が最も流行ったのが、昭和60年ごろから始まったバブル期でした。
これが大流行するにはそれなりの背景がありました。

 その一つは、土地バブルです。首都圏、近畿圏、名古屋圏などの都市部のみならず地方
都市までその地価が毎月ドンドン上がっていくのです。
 土地投機熱が加速し、銀行も土地さえ担保に取っていれば貸金が焦げ付く心配がない
からと、土地投資事業にどんどんお金を貸しました。
 皆が土地を欲しがるものだから、需要と供給とのバランスで土地の慢性供給不足が生じ、
これがさらに土地の価格を押し上げる要因となった。
 そして購入した土地は保有して、売るのをじらせばじらすほどその間の保有益は上がって
いく。一時は土地さえ仕入れられれば、儲けはもう確定したようなものだ、という時期でした。

 もう一つは、その当時土地の実勢価格と、相続税の評価時に使う土地の価格すなわち
路線価との乖離が相当ありました。
 土地の実勢価格と相続税評価通達に定める路線価は、今でこそ後者が前者の80%相当
額ですが、その当時は、路線価は実勢価格の20?30%程度という極めて大きく乖離して
いました。
 国も土地の価格が急激に上がりだした一方で、路線価の見直しは土地価格の推移を見て
手を打つものですから、結局路線価を引き上げるのが後手になってこうした大きな乖離が
生じてしまったのであると考えられます。
 尤も土地が値上がりをしていなかったとしても、路線価は実勢価格の50%程度にとどま
っていたようですが...。

 ただ地主さんからすれば自分の所有している土地の価格がどんどん上がり、それにつら
れて路線価も上がり、相続税が大幅に上がるのを指をくわえて見ているはずもありません。
 何とかしなければと思った矢先、建設業者や土地コンサルタントから猛烈な営業攻勢が
入りました。

 何しろあの時期は日本が一番元気だった時期で、やることなすこと全て当たっていました
から、当時流行ったジュリアナ東京ではないですが、イケイケドンドンの風潮で国民全体が
熱病にかかったかのように興奮していました。
 土地の上にアパ?ト、マンションを建てることにより、しかも自分のお金は一切使わず全額
銀行からの借金により、憧れだったアパ?トやマンションのオ?ナ?になれるのですよ、
これが究極の節税策、相続税対策ですよ、という切り口で多くの地主の方々はこれに飛びつ
きました。

 普段の平常な金銭感覚の下では、何千万いや何億の借金をすることには抵抗のある、特
に借金をすることが大嫌いな地主の方々が当時はいとも簡単に借金をされました。
 これもあの特殊な時代背景のなせる業でしょうか。

 特に日本人の場合、一つのスタイルが成功しある程度定着しますと、自分もその波に乗り
遅れまいとして、雪崩現象的に流行ることがあります。この借金によるアパ?ト、マンション経営
はその典型例でしょう。