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私の愛読書 その3 [私の愛読書]

2008-06-04

 前回に引き続いて人間が人間らしさを失いかけているのではないか、という点から話を続けます。
現代人、特に今の日本人が失いかけているものと感じるのは、道徳心の欠如です。
 そして、その最大の原因は、言うまでもなく社会の最小構成単位である家庭にあります。
加藤氏は家庭が邪悪な心に満ちている現実を指摘し、その解決のためには親自身が自分をありのまま受け入れることを説いています。
 親が周囲の世界に敵意や警戒心を持っていては、到底自分の子に優しい気持ちで接することが出来ない、と言うのです。
 確かに今の世の中は忙しすぎます。誰もが何かにいつも追われていて気持ちの余裕がない。そのため他人の心配事にまで気が回らないのが悲しい現実です。
 人間らしい思いやりのある心を失うまいと思っていても、自分の頭の上の蠅を追うのに精一杯で他人にまで気が回らない。これが家庭になると子供の情操教育に大きく影響してくるのです。
 そうまでして忙しく動き回る私たちは、一体どこへ向かっているのでしょうか。
少し冷静になって考えてみると、どうも私たちはお互いがお互いを煽っているようにしか見えません。そしてお互いに煽り合って何か良いことはあるかというと、あるように思えません。
 あるとすればあいつに勝ったとか、少々出世したとか、どうも局地戦での勝利にこだわりすぎて、全体を見ていないのではないでしょうか。
 局地戦に勝ったとしても、そのために犠牲にしてきたもの、それが社会的弱者といわれるお年寄りや子供ではないでしょうか。
 お年寄りに対しては、そこのけそこのけとばかり端に追いやり、お年寄りは一部の富裕層を除いて自分たちの老後をどうしようか、と思案に暮れている。
 子供たちは物質的には恵まれていても、親に時間がないため十分に社会での生き方、道徳心を教わらないで社会人になってしまう。
 教育は百年の計、と言います。
特に子供が親から離陸するまでの間私達親の役目は、子供が自分たちの力で社会の中で自立した生活を送ることができるよう十分教育することです。
 その教育の中で特に欠如しているのが、他人との関わり合い方、つきあい方です。
自分が大事であるように他人も同じ人間であり、尊い存在であるという当たり前のことが正しく教えられていない。社会生活を営んでいの上でのその一番大切な教育が不十分どころか、大いに不足しているのは間違いないと思います。
 下手をすると子供自身が愛情飢餓に陥っていて、それがために自分のことしか考えられない状況になっているのかもしれません。
 私は今の日本がこういう家庭断絶が多発するに至った元凶は、核家族にあると思っています。
この忙しい世の中で、親も共働きでなければ生活が立ち行かない経済状況下では、どうしても子供に十分な情操教育を施す時間がありません。だから子供はさまよってしまっているのです。
 その点三世代以上が生活する大家族の下では、親のいない間おじいさんとあばあさんが孫の面倒をみます。孫には甘やかすばかりといいますがそれでいいのです。
 祖父、祖母からたっぷりと愛情を注がれ、優しい子に育っていくでしょう。
それに祖父、祖母は人生の達人です。酸いも甘いも噛み分けた人生の先輩の一言には人生訓がたっぷり詰まっています。きっと広い心で孫を、正しい人としての道に導いていってくれます。
 主に経済的な理由から同居できない方にはお気の毒ですが、極力先人の知恵をお借りするべきでしょう。
 また国も高度経済成長を実現した、地方からの労働力の確保の結果としての核家族制度が一つの役割を終えた今、その核家族制度が制度疲労を起こしている現実を謙虚に受け止め、三世代以上が同居できるような社会の構築を本気で進めるべき時に来ていると私は思うのですが。
 次世代を担う子供の教育特に情操教育に最も力を傾注することこそ、社会を住みやすくしていく最善にして最も近道である、まさに教育は百年の計であり時間はかかるがその効果はすさまじいと思うのです。