私の愛読書?悩む力を読んで その4 [私の愛読書]
ですから資本主義、個人主義の名の下に、人間を個に解体しようとする動きは、まさに人間にとっては自殺行為であるのです。
その証拠に、どの集団にも属することが出来ず、孤立化して目標を見失った若者が数々の悲惨な事件を起こしていることは、皆さんも新聞やニュ?スで厭というほど見聞きしているでしょう。
彼らが事件を起こす動機の殆どは、社会への復讐です。
自分を見捨てた、或いは自分をかまってくれなかった冷たい社会への復讐、怨念です。
正常人からすれば逆恨みとしか思えないのですが、彼らはおそらく社会、集団へ入っていくことが極端に下手な人たちなんだろうと思います。
特に思春期を経た若者は、自分を大切にしたいという自我が大きすぎるあまり、他人にうまく溶け込んでいくことが出来ず、悶々としていった結果、次第に苦しんでいる自分を追い込んだのは、この冷たい個人主義が蔓延した社会だという被害者意識を強く持つようになり、それが特定の人を定めない無差別殺人へと駆り立てていったと想像されます。
私も他人との付き合いには未だに苦しんでいますし、おそらくこの悩みは万人全てに共通する最も身近でありながら、最も難しい不変のテ?マであると思います。
だからこそ「悩む力」でも全編に亘って、自我のあり方、他者との共存の仕方について著者が滔々と自説を説かれているのです。
私は資本主義、科学万能時代の宿命とは思いながらも、制度面での見直しをすることによって、何とかしてこうした悲しい風潮を食い止めることが出来るのでは、と信じています。
何故なら人間はそもそも社会的な動物であるからです。
どんなに物質文明が進んでも、我々は人間であり、社会的な動物なんだ、どこかの集団に属して、その集団の規律を守ることによって精神の安定が図れるのだ、ということを思い出して頂きたい。