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私の愛読書?悩む力を読んで その6 [私の愛読書]

2008-10-20

 この他姜教授は、働く意味、愛について、お金との関わり方、知性と知識について、などのテ?マについて、鋭く切り込んでおられます。
 全編を通じて私が大きく印象に残ったのが、個人と社会との関わり方、距離感です。
 自分を守るためには、ある程度自我を確立する必要がある反面、自我が肥大化しすぎると、かえって他人とうまく折り合いをつけられなくなる。
 しかし人間は社会的な動物であり、社会に認知され、社会的な存在としてそこにいることを承認されないと、人は孤立化して、生きる意味を見いだせないままにさまよい、そして最悪は命を絶ってしまう。

 私はかねてから自分だけの造語を作っております。
 それは、「かまってほしい症候群」という言葉です。

 なんだかんだ言っても、人間は他人に関心をもたれ、注目され、脚光を浴びないと耐えられなくなるのです。そしてこの欲求が満たされないと、フラストレ?ションが溜まり、愛情飢餓感を訴えるのです。
 そして愛情飢餓感が屈折すると、金、物、権力などに異常に固執し、それらの亡者になる人も多くいます。
 極端な事を言えば、この愛情飢餓感が解消すれば、人は皆他人に対して寛容になり、この世の争いも殆ど無くなるのではないでしょうか。
 愛情飢餓感が昂じると人はウツ状態となりますが、今の世の中殆どの人がウツ状態に陥っているのではないでしょうか。

 もう一つ、現代社会で厄介なのが、自己喪失感です。
 よりよい生活を求める、幸福な生活を夢見る。
 そのためには両親の十分な愛情を受ける間もなく、幼いころから必要以上の競争社会にさらされ、ひたすらよい学校、よい企業への就職を求め、よい条件のパートナ?との結婚を求める。
 あすなろ、ではありませんが、明日には輝かしい未来が待っている。そのためには今頑張ろうと思って一生懸命頑張ってきたのに、就職で苦労し、入社した会社の未来は怪しい、給料も上がらないからよい条件での結婚もできない。

 こうして今までの成功モデルが砂上の楼閣であり、幻想だと分かってしまったのが、今の混沌とした価値観の元凶です。
 先に私は、人は自由を求めているようで、適度に束縛、拘束される、型にはめられることを望んでいる、と書きましたが、成功パタ?ン、幸せになるパタ?ンという型にはめようとしても、今の世の中では、そうした典型的な成功モデルが瓦解してしまったことが、特に若者がさまよってしまう最大の原因となっています。

 自己責任の時代と言われても、余程自分が確立されていなければふらふらしてしまうのは、やむを得ないことではないでしょうか。
 老若男女を問わず、自分の生き方に確固とした自信を持って生き生きとしている人がどの位いらっしゃるでしょうか。
 そうそう自己を確立し、他人との良い距離感を持って生きられる人はいないと思います。

 そう考えると、人はお互いの弱さを認めて、肩を寄せ合って生きていく以外に、自分の自己喪失感を埋める方法はないのではないでしょうか。

 愛情飢餓感を満たすためにも、自己喪失感を埋めるためにも、私はばらばらに細分化された個をもう一度結束させる制度が必要であり、その中核をなすのが、家族制度の見直しであると思うのです。