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私の愛読書?悩む力を読んで その7 [私の愛読書]

2008-10-21

 最後にこの「悩む力」で素晴らしい点は、若者ばかりが注目される風潮へ強烈なるアンチテ?ゼを唱えているところです。確かに若者はいつの時代においてもこれからの文化、文明の担い手であり、彼らに期待するところは真に大であります。
 しかしその反面、戦力を下りた、あるいは下りようとしている中高年、そして老年に対する風当たりは決して温かいものではありません。

 かにこの変化の激しい時代、時代の変化についてゆけなくなった、或いはいつまでも過去の時代のやり方にこだわっている中高、老年層は、若者から見ればウザったく映るのかもしれません。
 しかし彼らは若者の前の時代を支えてこられたいわば戦士であり、尊敬されこそすれ決して蔑視される存在ではありません。

 確かに閉塞感の蔓延する今の時代において、若者から見れば、どうしてもっと夢のある、未来のある時代を自分たちに用意しておいてくれなかったのか、という恨み節も多々あるでしょう。
 しかし、その時代、その時代を生き抜いてきた人たちは、例えば第二次世界大戦後の戦後復興により日本経済が大成長時代を迎え、物資が日本中に行き渡りましたが、物資が欠乏していたその時代には、その物資の豊かさこそが幸せの象徴だったのです。

 それが約60年を経て今度は、そうした大量生産、大量消費の時代の負の側面が大きくクローズアツプされるようになってきました。
 化石燃料の大量消費による地球温暖化、そして家族制度では私が度々書いている核家族制度のもたらす家族断絶がその代表例です。これ以外も終身雇用制、年功序列制の瓦解など日本社会全体が様々な局面で制度疲労を起こしています。

 それならば、高度経済成長時代は果たして失敗だったのか?答えは否であると私は思います。
 私は生まれていなかったのでこれはあくまで想像でしかないのですが、戦争で疲れ果て、物資も乏しく生きていくのがやっと。しかも戦いに敗れ、日本人は世界で最も優秀な民族という教育を受けていたそのプライドがズダズタになって身も心もやつれきった日本人にとって、あの華やかなアメリカ人の振る舞いは羨望の的になったことは、想像に難くありません。
 それから日本は戦後復興に向け国民一丸となってひた走るのですが、この昭和世代を批判することは誰にもできないはずです。