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税制改正について考える その4 [税制改正についての私見]

2008-05-02

 前回の続きで定期同額給与についてコメントします。
今回の法律改正はまさに国税庁にとっては完璧な出来栄えではないでしょうか。
 確かに理論的には決算期後2?3か月以内に定時株主総会を開催することになっている。また定時株主総会は2年に1度は原則として役員の改選時期でもある。その時に次期以降の役員に対して会社との間で委任契約が交わされ、向こう1年間に支払うべき報酬を取り決める。
 プロ野球選手の年俸更改と全く同じですよね。ただ大きく異なる点は、プロ野球選手の場合は向こう1年間の報酬はキチンと支払われる一方、多くの中小零細の同族会社は前回にも触れましたように資金繰りに左右され、むしろまともに支給されているケ?スの方が少ない点でしょう。
 この定期同額給与の一番キビシイ点は、総会で決めた報酬は向こう1年間何としても払いなさいと要求していることです。業績悪化等により資金繰りが極端に悪くなった場合には例外的に減額改定を認めていますが、少々の資金繰りの苦しさぐらいでは認められないようです。
 これこそ建前主義の悪しき弊害と言いたいです。資本と経営が分離していない同族経営を何とかオープンにさせよう、社内的に牽制が働くようにしようとする法律の要請も分かりますが、実態とあまりにもかけ離れている。資本と経営の分離が理想像ではあるでしょうが、そんな簡単には事は進まない。 
 事実、同族会社主宰役員に対する報酬の一部損金不算入制度にしても、株式の一部分散化や親族以外の者の経営への参画などの方法でこの法律の適用回避を検討することはあっても、同族色を薄めることによる経営の弱体化を恐れるあまり、増税を認容する会社の方が圧倒的に多いと聞いています。
 確かに同族経営は言ってみれば社長一族のワンマン経営です。そこには不正も働く余地が十分にありますが、私が思うには不正をやる会社は同族会社でなくてもやるでしょう。(尤も同族会社でない会社よりは抑止力は働くでしょうが。)それよりも大多数の同族会社の経営者は良心的で善良な経営者であり、経営基盤が揺さぶられない分、本業に打ち込むことができる点で、同族経営はむしろ優れていると私は思うのですが如何でしょうか?
 ですから今回の法律改正の目指すところは十分理解できますが、いかんせん現実と乖離しすぎている。もっと現実に即した制度に改めていただくことは出来ないのでしょうか。 
 現段階では時代の先取りであったとしても、法律が会社の在り方を徐々に本来の姿に変えていくのだ、誘導していくのだとしても、そうなるまでに何十年かかるでしょうか。
それまでの間は、私には今回の2つの法律改正は同族経営が圧倒的に多い中小零細企業いじめとしか映りません。