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税務調査について その6 [税務調査について]

2008-07-15

 また消費税の課税事業者が課税売上高1千万円と大幅に引き下がったことに伴い、殆どの事業者が消費税課税事業者となりました。
 従って税務調査も法人税と消費税、所得税と消費税との同時調査が当たり前となりました。
 消費税については、課税売上、非課税売上の区分、課税仕入れ非課税仕入の区分、控除対象消費税と控除対象外消費税との区分計算がキチンとされているかのチェツクが行われます。
 特に不動産業、医業など課税売上と非課税売上が混在する業種においては課税、非課税の区分及び控除対象消費税の計算にあたって一括比例配分方式、個別対応方式が適正に計算されているかなど、、輸出業のように輸出免税つまり課税売上取引であるが、税率がゼロであるゼロ税率売上のある業種においては、輸出の事実の有無、輸入業の場合の課税仕入高の計算が適正にされているかなど原始資料と照合しながらの調査が行われます。
 また簡易課税を選択している事業者で、基準期間(一般的には2年前)の課税売上高が五千万円に近い事業者については、基準期間の課税売上が果たして五千万円以下であるか、売上の漏れがないかキビしくチェックされます。何故ならばもし基準期間の課税売上に漏れがありその結果5千万円以上となってしまうと、そもそもその2年後の事業年度については簡易課税による計算が出来なくなってしまうためです。
 経費の中では外注費に対する調査が重視されます。というのも外注費は本来請負契約を想定しているのですが、実質は雇用契約に近い形態のものもあるからです。この辺りに関する解釈は非常に難しく、外注先がいつも誰かの指揮監督権の下で動くか、持ち場について独立した権限を持っているか、或いは材料を自己調達しているかなどを総合勘案して判断していきます。

以上に述べたような流れで税務調査が進むのが一般的です。この他現金商売が中心の事業者では、金庫の残高が帳簿残高と合致しているかの確認、調査2?3日前の売上レジロ?ル、仕入領収証の提示、代表者個人の通帳の提示などを求められます。建設業では現場別工事台帳、職方管理台帳などの提示を求められます。
 こうして約2日間にわたる調査により、2日目の午後3時頃、税務署から調査の総括として問題点の指摘を受け、その指摘を容認するかそれとも税務署員に対して釈明の上、取引の税務処理に対する理解を求めるか、言わば最終の詰めの交渉が行われます。

 ここまでの過程で、顧客は我々税理士が日頃から注意や改善を促してきた項目と税務調査官が全く同じ指摘をしていることを十分に知るのです。
 普段から耳にタコができるくらいに口酸っぱく言われてきてウンザリしていたが、こういうことだったのか、とお客様の中には残念ながらその時になって初めて本気で気が付く人もかなりいます。
 言い方は悪くて恐縮ですが、ある程度切羽詰まって危機感を持たないと人間は動かない、どこかで他人はどうあれ、自分だけは大丈夫だろう、という根拠のない慢心がそうさせるのでしょう。
 誰だって自分の思うようにしたいし、自分のやってきた行動、これからやろうとしている考えにケチはつけられたくない、特に中小、零細事業者の方々はそれでなくても取引先に大変気を使い神経をすり減らしているのですから、自分たちの会社の経理処理、税務処理位自由にさせろ、という気持ちも十分にあるでしょうが、残念ながらそういう訳にはまいりません。
 あくまでも適正な会計処理、税務処理を継続していかないと、どこかでお灸をすえられ、下手をすると社会的な信用力がガタ落ちになる危険性も十分にあるのです。まさにお天とう様に嘘はつけない、といったところです。

 そしてその税務調査を受けてから、お客様の我々に対する対応、態度が大幅に変わることがあります。やっと我々の様々な助言を真剣に聞いて下さるようになった。その瞬間ほど我々にとって嬉しい瞬間はありません。それまで信用されなかったわけではないのでしょうが、、どうも口うるさい野郎だ、固すぎる、など面と向かってではなくても態度で示されるお客様が、そうやって真摯な態度で我々の言う言葉を聞いて下さる、その瞬間こそ長年の苦労が報われた瞬間であります。
 我々税理士の存在価値といいましょうか、我々税理士のやろうとしている業務の良さが分かっていただけるのに何年もの歳月を要するのが、一番ツライ点です。
 しかし長くお付き合いしていく中で徐々にお客様からの信頼を得、さらに長く深いお付き合いが出来ることを願って、今の業務を一所懸命やってだけです。