事務所通信
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税政連の活動とその役割 その5 [税政連の活動とその役割]

2008-09-23

 昭和から平成にかけてのバブル期に土地を高値で購入し、大損をしながら塩漬けにせざるを得ない地主さんはそれこそ日本中にいっぱいいらっしゃるでしょう。
 それ以外にもバブル期ほどの高値ではないにしても、土地神話を信じて不動産投資事業として、アパ?ト経営、駐車場経営に乗り出した地主さんも多くいらっしゃいます。

 そうした地主さんの土地の損切り売却のチャンスを奪った、という点で非常に社会的影響力の強い法律改正でした。
 確かに投資用不動産にせよ、投資有価証券にせよ、いわゆる自分が生活していくのに必要な資金以外の投資資金の活用については、国が税金を軽減するという形でバックアップすることが良いのか、十分に議論されなければならない部分であると思います。
 事実有価証券の売却損益については、有価証券の分離譲渡所得の中での黒字と赤字との通算しか認めておらず、その理由は投資資金の運用は個人の自己責任に任せるべきであって、税金という公的なお金を使って救済すべきものではない、というものです。

 従ってその改正趣旨は十分理解できるにしても、その改正過程があまりにも性急であり、出し抜け的な印象は拭えません。
 だってそうでしょう。平成15年12月17日に税制改正大綱が発表されて、わずか2週間後の平成16年1月1日から新法を適用するというのですから。
 その2週間とて、年末の残された営業日を考慮すると、10日間もないでしょう。
 この大綱を知ってから、15年中の売却にするまでにわずか10日間しかないのです。
 実質的には何もできないままに、平成16年を迎えてしまった土地所有者が殆ど100%でした。

 国税庁サイドとすれば、事前にこの改正情報を知らせれば、損切りしたい土地所有者が殺到して、土地の価額の大幅な下落が避けられず、大きな社会問題に発展することを回避したかったからでしょう。だから敵を欺くにはまず味方から、ということで戒厳令を敷いたと考えられます。

 しかし税理士側、税政連から見れば大いに不信感が残りました。最後まで蚊帳の外でしたから。
 今回のように重大な税制改正情報を全くキャッチできなかったことは、税政連内部に大きなショック及び失望感を与えました。