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経営について考える その1 [経営について]

2008-05-21

 このところ趣味それもバイクの話ばかりでしたので、今回は経営分析と資金繰りについて思うことを述べたいと思います。
 私が会計義務所に入所したのが25歳の時でしたから、この業界に足を踏み入れて早27年つまり四半世紀にもなるのですね。早いものです。
 まあそれはともかく、私が中小企業の経営者に接して一番驚いたことは皆さん何だと思います?
それは数字に対する勘です。
 我々が遅れ遅れで試算表を社長に見せる前に、社長は自社の利益をおおざっぱに把握しているのです。儲かっている会社は例外なく、またそれほど利益は出ていなくても堅実な経営をしている会社も殆どがそうです。
 新人の数年間はそのことが実に不思議でしたが、考えてみれば当たり前ですよね。社長が自社の経営状態を大まかにでも把握していなければ、日々の経営などやっていける訳がないのですから。
 ただなかなか分からないのは、社長はどこまで自社の実態を把握しているのだろうか、ということではないでしょうか?
 どの位の売上があれば自社はやっていけるか、どの程度の利益率があるのだろうか、毎月どの程度の資金があれば自社の資金繰りはヤリクリできるのか、少なくとも以上の3項目はどの社長も把握しているようです。
では把握していないことは何か?
 会計事務所の職員なら必ず聞かれる質問は次のような内容ではありませんか?
「儲かっているとおたくらは言うけど、金がないんだよな。毎月ヒ?ヒ?言っているよ。」
或いは「利益が出ているから、この際借金を返済しようと思うんだ。どうだね?」
 皆さんはこれらの問いに対してどうお答えになっています?まあ各人それぞれでしょうが、ひとつ言えることは、これらの質問が出るということは、収支と損益との区別がされていない、というか頭の中ではごちゃごちゃになっている、ということです。
 だとすれば我々が提供できるサ?ビスは何か?

 それは第一に損益と収支を区分する表を作成し、社長の頭の中をスッキリさせてあげることです。

 次にそれを発展させて損益計算書と貸借対照表との関係を分かりやすく説明してさしあげることです。

 経営者の多くが経営を収支ベースで考えているのに対し、損益との関係が今一つわかっていない。あるいはまれですが逆に損益ベースで経営を考えている社長は、収支についてはからっきし弱い方が多いです。
 ですから収支と損益との関係が正しく認識、理解されている経営者はむしろ少ないというのが私の実感です。
逆にということは、我々会計事務所も自分たちのお客様に十分に説明してきていないのが事実ではないでしょうか?
 数年前に大ベストセラ?になった書籍「裏帳簿のススメ」は、その骨子は個人の帳簿と会社の帳簿とを合算して収支を考えていこうとするもので、多くの同族経営の中小企業にとって必須の視点です。この書籍は収支が第一であり、そのためには利益の出る正しい経営をしていきなさい、と説いた本で、その内容は収支の切り口から経営のあり方を説いた、タイトルとは裏腹に極めてオーソドックスなものです。
 現在の会計事務所としてのサ?ビスの潮流は、節税ではなく収支が成り立つように指導していくことです。
つまり会社を継続していくには当然毎月の資金繰りが最重要である。法人税をはじめとする各種税金も会社が存続していくためのコストとして捉え、当然資金繰りの中に織り込んでいく。だとすれば当然利益を出して行かなければ継続的な経営はできない。
 あまりうまく説明できませんが収支面から出発して損益に切り込んでいく手法を採っています。
経営計画をはじめとする各MAS業務は、多少切り口が違ってもこのような手法で会社の経営者の意識改善、ひいては会社全体の意識改善、共通目標の設定を目指すものです
 このような流れになったのも、今は業界全体が潤うというような平和な時代ではなく、各経営者の経営感覚がより厳しく問われるようになった、つまり経営により厳しくなければ生き残れない生き残りレ?スの時代に突入したという時代背景の他に、
法人税が大変細かく整備され、前にも私が触れた同族会社役員報酬への規制や何度も繰り返される高節税を謳った生命保険商品への規制、各種引当金の撤廃や規制による内部留保の排除を促す諸規定の整備など節税と名がつく項目が殆ど潰されてしまったことも大きく影響しています。
 かくいう私の事務所でも、当然永続的な経営を目指す経営者をお手伝いすべく、収支の側面から説明し、結果として黒字経営の必要性を強く訴えています。
 これが本来の姿でして、節税の前にまず利益を出すこと。結果として利益が出た時に合法的な範囲での現実的な節税を考える。
 法人税等を支払わないスタンスでは経営自体が大きくなりませんので、それよりも如何に利益、売上を上げて頂くか経営者にその方面にご自分の力を傾注していただきたいと思っています。